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漂着の遭難者 [海風抄]

 

 前日が荒れたせいか、海は多少のうねりがあった。

 夜来よりの驟雨が止み、ようやく外に出られるようになった。

阿鼻ィろーど.JPG

 

 

 

 

 

 

荒れた海には、必ずといって良いと思うが、彼らがいる。

ハシボソミズナギドリ_1.jpg

先程、ネットで調べてみたが "ハシボソミズナギドリ " という渡り鳥だそうだ。 

息も絶え絶えだが、この子はまだ生きている。 拾い上げて波の来ないところへ移した。

 

 

 

 

 

他にも数羽打ち上げられていたが、既に死んでいる。

カラスやトビが、この子を狙っている。しばらく、この子の傍にいた。

漂流の疲れか、すぐに眠った。 鼻から水を吹きながら、苦しそうな息使いをする。

ハシボソミズナギドリ_2.JPG

この時期の荒れた後の海には、必ずと言っていいほど彼等の骸を見る 。

彼等の渡る距離は、オーストラリアからアリューシャンまでの壮大な距離を行き来するという。

 

誰かに拾われ保護されて欲しいと思い、この子を流木の影に隠し、そこを去った。

 

 

この子の名を考えた。

 

司馬さんの「功名が辻」では、

お千代が拾った子は「拾い」と名付けられたが、

家督が継げないので出家させて僧にした。

 

旧約聖書では、

ファラオの王女に拾われた子が「モーセ」と名付けられ、

のちエジプトからイスラエル人をカナンの地へ脱出させた。

ちなみにモーセとは、拾った子という意味がある。

 

君の渡りの距離を思えば、こちらが相応しいか。

 

「モーセ」を原語のヘブライ語風に発音すると「モシェ」という。

君を「もしぇ君」とよぶ。 「ひろい」じゃ、何だかなぁ。

 

生きてろよ、もしぇ君。

次に行く時、ここに君の骸など、俺に見せるな。

 

おしまい


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小雨

この景色…

知ってる気がする。昔行ったことがあるんだろうか。
海ってやっぱり綺麗ですね…
by 小雨 (2008-05-30 05:44) 

Anchor

小雨さん♪
ここは知名度の高い所です。 来たことがあるかもしれませんよ。
でもね、ここの海の水って本当は汚いんですよ。^^;
小雨さんのところの海の水の方が、絶対に綺麗なはずです。
by Anchor (2008-05-30 20:01) 

Rin

・・そうなんですか・・荒れた日の後の七里にはそんなことが
あるのですね~
渡り鳥の宿命なのでしょうが、どうかこの子が、無事にたどり
ついて欲しいですね。とても良い記事ですね、感銘しました。
by Rin (2008-05-31 08:44) 

ハイマン

大自然には何者も適わない
悲しいけど、それが自然界で生きる掟なんですね
by ハイマン (2008-06-06 22:00) 

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